すみません。

すぐに本文に行きます。

それでは。



「夫の浮気に制裁を。」

ブー・・ブー・・ブー・・・

携帯のバイブで目が覚めた。
音に変更するのを忘れて寝てしまったようだ。

慌てて電話に出る。

「もしもし。」

「トランさん!!トランさん!!」
「大丈夫ですか!?トランさん!!」

「大丈夫ですよ。」
「どうしました?」

「何度電話をしても出なかったので、心配しました!」

「すみません。寝てしまっていました。」
「何かありましたか?」

「大変です!!」
「主人が、主人が・・・通帳のお金を引き出したのに気づきました。」
「金を今すぐ返せとすごい勢いでメールが来ています。」
「着信もすごいですが、怖くて出れません。」

始まったか・・・。
思ったよりも早かったな。

「真紀さん。落ち着きましょう。」
「いつかは気づかれる事です。」
「予定内の行動です。」
「大丈夫です。」
「真紀さんの携帯電話は、通話中着信設定はしていますか?」

「え?それって通話中に着信が来たら分かる設定の事ですか?」

「そうです。」

「それはしていないです。」

「通話中にご主人から着信があるかもしれません。」
「話し中だと貴女が何か行動していると思われるかもしれません。」
「通話中着信設定をしてから、もう一度連絡して下さい。」

「わ、分かりました。」

一旦電話を切った。

雄太の行動が想像よりも早いな・・・
真紀さんが探偵を雇った事を知り、他に何か行動されていないか確認し始めたのだろうな。
真紀さんはまだ弁護士を見つけていない。
時間稼ぎをしないといけないな・・・

少しして真紀さんから電話が来た。

「設定しました。大丈夫だと思います。」

「僕の別の携帯から今から電話します。」
「それで、設定が出来ているか確認して下さい。」

僕はもう一台の携帯から真紀さんに電話をかけた。

「あ、着信が来ました。」

「なら大丈夫ですね。」

もう一台の携帯を切り、真紀さんに伝える。

「ご主人からの電話、メールは暫く無視して下さい。」
「そうすれば、どんどん酷い内容のメールが来るはずです。」
「それも、証拠として有効に使いましょう。」

「え??電話もメールもブロックしたいのですが、それはダメですか?」

「怖いでしょうし、気になるでしょうし、不安になると思いますが、ブロックはしないで下さい。」
「さらなる暴言を押さえときたいのと、ブロックをしてしまうと金を持って逃げ、協議も拒否したと今後主張され、立場が悪くなる場合もあります。」
「ご主人との協議の姿勢はあったと言えるようにも、ブロックはしないで下さい。」

「わ、分かりました・・・」
「嫌ですが・・・頑張ります。」

「いろいろ確認していきますね。」
「自宅の荷物の持ち出しは何処までできましたか?」

「自宅の私や翔太の荷物は全て運び出しました。」
「テレビとかも持って出たのですが、本当に良かったのですか?」
「他にもいろいろ持ち出してしまったので、自宅を見たら、全て持ち出されて生活出来なかったと、この先言うかもしれません。」

「それは大丈夫です。」
「どちらが管理しても問題ないですし、半分払えと言われても中古の価値なんて大したことないです。」
「それにご主人は、持ち出された事で生活出来なかったと主張するかもしれませんが、こちらはその前から女の自宅に住んでいるとの証拠があります。」
「また、こちらが時期を言わず、女の家に宿泊している事を提示したら、今現在まだ浮気の証拠はないとご主人は判断しているので、時系列を誤魔化して、テレビなど生活用品まで持ち出されて生活出来なくなり、その事を会社で話したら女に同情され、寝泊まりする場所が無かったので、仕方なく女の自宅に泊まり世話になったが、やましい事は一切無い。妻が生活用品を持ち出したのが悪い。それに、そもそも婚姻関係破綻後の事だ。と主張してくると思います。」
「しかし、そういった虚偽の内容を言えば言うほど、こちらは有利になり、ご主人は自分の首を絞めるので、ご主人が何を言っても、最終的には勝ちに持って行く事が出来ます。」

「トランさん・・・どうしていつもそこまで先を読めるのですか?」

「先を読めると言うか、今までの経験と、ご主人の性格を考えると、そう主張するだろうなと判断しているだけです。」
「先を読むまでの内容じゃないですよ。」

「凄いです。トランさん。」
「トランさんが言うなら安心しました。」

「それよりも、ご主人は貴女が金を引き出した事に気づきました。」
「今日にでもご主人は自宅に向かうでしょう。」
「自宅に戻る事は二度と出来ないと思ってください。」
「忘れ物はないですか?」

「大丈夫です。」
「言われた通り、権利書とかも写真を撮りましたし、私や翔太の物は全部運び出しました。」
「持ち出した後の部屋の写真も全て撮りました。」

「了解です。」
「それと、今後の動きですが・・・」

「あ、そうだトランさん。」
「写メを送ったのですが、それは見て頂けましたか?」

僕の話を遮り、真紀さんが聞いてきた。

「え??写メ??」
「ちょっと待ってください。確認します。」

僕が寝ている間に真紀さんからメールが来ており写メが一枚添付されていた。

添付画像を開く。

「・・・・・!!」
「これって!」

「トランさん。それは使えますか?」

「つ、使えます!!」
「これは何処で見つけたのですか?」

「主人の部屋を確認していたら、クローゼットの下にある衣装ケースの隙間に挟まっていました。」
「他にも探したのですが、これ一枚しか怪しいのはなかったですが・・・。」

写メには、こちらが把握していない銀行の引き出し明細書が写っていた。

雄太・・・ミスったな。
この明細書の価値は計り知れないぞ。

「真紀さん。よく見つけてくれました。」
「これは凄い証拠です。」
「これ一枚で数百万の価値があるかもしれません。」

「え??紙一枚で?」

「どれぐらい、ご主人が金を貯めこんでいたのか分かりませんが、どちらにしても共有財産を貴女に隠していた証明は出来ます。」
「ご主人が貴女にだけは知られたくなかった隠し事です。」
「僕が喉から手が出るぐらい欲しかった、証拠の一つです。」

「そんなに凄い証拠だったんですね!」
「よかった〜。」

真紀さんは久しぶりに明るい声で答えた。
だが、すぐに震えた声になった。

「・・・トランさん。また主人から着信が入っています。」
「もう、何十回目か分かりません。」

「・・・・・・・・・・・。」

真紀さんが探偵を雇っている事を知り、金まですべて引き出され、自分よりも下だと思っていた真紀さんが反抗し、首尾よく行動している事に苛立ち、激怒しているのだろうな。

これで慌てて自宅に戻り、家が空っぽなのを確認したらさらに逆上するだろうな。

雄太・・・いい気味だ。

だが・・・

逆上した雄太がする次の行動は・・・

「真紀さん。ご主人は貴女と翔太くんが住んでいる実家にまで来るかもしれません。」

「え!?」

「貴女と翔太くんが実家に住んでいる事は、ご主人はまだ知りませんが、実家に住める環境だという事は、ご主人はすぐに思いつくでしょう。」
「自宅にいないと分かったら、実家に帰ったと判断するはずです。」
「それでなくても、良い人間の振りをして、実家に尋ねに行く可能性があります。」
「ご主人が実家に来て揉めるようであれば、警察を呼んで下さい。」
「貴女と翔太君は、ご主人に暴行され実家に逃げた被害者ですので、ご主人が実家に来れば、さらに貴女は有利になります。」
「ご主人か実家に来たという証明を警察にしてもらいましょう。」
「また、玄関に録音機材を置いて、いつでも録音出来るように準備しておいて下さい。」
「ドアは絶対に開けないで下さい。」
「また、ご両親にはご主人が来ても、暴力の事はいいですが、浮気の事は絶対に話さないように伝えて下さい。」

「怖いですが、分かりました・・・」

「それと、ご主人に殴られた被害届は提出しますか?」
「それとも、止めますか?」
「期限はもう少しありましたが、状況が動いてしまいました。」
「この後の行動にも関わってくるので、早めに決断をしてほしいです。」

「それは両親と話して決めました。」
「提出したい気持ちはありますが、逮捕されると収入が無くなるかもしれないので、それはやめようという話になりました。」
「その分、慰謝料などで償ってほしいです。」

「分かりました。後で考えが変わると今後の計画に支障が出る事もありますが大丈夫ですか?」

「はい。翔太が成人するまでは今の年収での養育費も欲しいです。」
「収入だけはいい主人ですので。」

「・・・・賢明です。」
「なら、真紀さんは、翔太君とご主人の面会はどう考えていますか?」
「面会をさせるつもりはありますか?」

「翔太を殴った主人に、翔太を近づけたくありません!」
「面会は絶対にしたくないです!」
「翔太も会いたくないと言っています!」

「その考えは今後も変わりないですか?」

「絶対にないです!!」

「もう一つお伺いします。」
「ご主人と直接会って話し合いをしたいですか?」

「それは・・・」
「前はしたいと思いましたが、今は怖くて会いたくないです。」
「出来れば、弁護士さんを探して弁護士さん経由で話し合いたいです。」

「分かりました。」
「そうすると・・・・」

「・・・・・・・・。」

僕は全ての状況と、雄太の今後の行動予測を頭に入れ考えた。

「・・・真紀さん。」
「今後の計画に支障が出ると言いましたが訂正します。」
「ご主人の演技を考えると、実家に行く前に良い人間のふりをして、先に別の行動する可能性がありますね。」
「ならこちらは逆にそれを利用して、面会させない為のカードを一つ増やして、それと切り札も作っておきましょうか。」
「被害届は念の為に先延ばしできる対策をしてみましょう。」
「また、ご主人が実家に来た場合の対応も、さらに強固にしてみましょう。」
「矛盾のない、自然な流れでそれらが出来るように行動してみましょう。」

「え??どういう意味ですか?」

真紀さんは不思議そうに聞き返した。

(風邪は治ったけど咳が止まらない・・・)

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