逆恨み。

逆恨みと言うか、本恨みというか、こういう仕事をしていると、元対象者から嫌がらせや脅迫などされる事があります。

調停や裁判などでは、調査報告書や、浮気の写真を提出する時に、誰が撮影したのかを記載しないといけないので、「トラン探偵事務所」が調査したという事は分かってしまうんですよね。

「死ね」とかのハガキが百枚ぐらい来た事もありますし、「今から殺しに行く!!」とか電話が来た事もありますし、事務所のドアをドンドン叩く人がいるので、モニターで確認したら刃物持ってドアを叩く元対象者や、対象者の浮気相手がいた事もありますし、事務所から出たら尾行されたり、突然殴りかかられたりとか、他にもまだまだいろんな事がありました。

浮気の場合は、単純計算で依頼者さん一人を有利にすると、配偶者と浮気相手二人から恨まれるので、調査をするたびに、解決するたびに、どんどん僕を恨む人が増えていきます。

まぁ仕事柄、仕方ないのですが、その嫌がらせの中で一番辛かったのは、一つの依頼が解決し、ルンルン気分で事務所に行った時にドアの前に土が山盛りにされていた事です。

ドアの前に土の山が70センチぐらい盛られていました。

さすがに20秒は唖然としていたと思います。

気を取り直して、ホームセンターに行き、土嚢袋とスコップを買って処理をしたのですが、雑巾で綺麗に床を拭くまで、2時間ぐらいかかりました。

さすがにヘトヘトに疲れました。
土って重いんですよね。

落ち着いてから事務所で、モニターの録画を確認すると、深夜に目出し帽を被った男性が、園芸用の土の袋を何度も何度も往復して積み上げ、最後に積み上げた袋を破り、土を盛り上げている映像が確認出来ました。

やり終えてから、満足したのか何度も頷きながら、色んな角度から山盛りの土を眺めていました。

目出し帽を被っているとはいえ、その雰囲気から少し前に裁判で負けた、元対象者だというのは分かりました。

でも、こんないたずらみたいな嫌がらせは、警察に言っても積極的には動かないだろうな〜と思ったのと、この元対象者は気が弱いタイプだったのと、お堅い仕事に勤めていたので、さっそく映像を写真にして、その元対象者が引っ越したばかりの新しい住まいに、会社の口座番号を記載した請求書と写真を速達で送ったんですよね。

土嚢袋代と、スコップ代、雑巾代、それにホームセンターの往復のガソリン代と、土を業者に回収してもらう処分費用(土ってゴミで出せないんですね。)、そして人件費(高め)です。

そしたら、なんと三日後には全額振り込まれていました。
さすがに振込みはないだろうと、慰謝料を含む、第二段、第三段を計画してたのに興醒めです。
儲け損ねました。

それから、その人からの嫌がらせは一切ないですが、その元対象者はいったい何をしたかったのだろうか?

どういう発想をすれば、土を盛る事を思いつくのだろうか?
いまだに謎です。

それでは。

「夫の浮気に制裁を」

よろしくお願いします。


コインパーキングに付き、調査車両に乗り換え、ひとみのマンションに向かう。
 
ひとみのマンション近くのコインパーキングに車を止め、徒歩でマンションに向かう。

時計を確認すると、ちょうど7時だった。

それほど待たなくても、二人は出てくるだろう。

監視体制に入る。

7時17分

マンションエントランスから、雄太とひとみが出てきた。

昨日、あれだけの事があったのに雄太は笑顔だ。

二人は腕を組んでいる。

エントランスから出る姿を撮影し、駅方面に向かう二人の姿を撮影する。

推測通り、雄太はひとみのマンションに宿泊したようだ。

マンションに数時間滞在していたよりも、宿泊の方が何倍も証明能力は高い。
昨夜、雄太がひとみのマンションに入った証拠はないが、状況的に認められるだろう。

これはかなり有利な証拠になる。

しかし、少しすると・・・

「・・・・・・ん?」

雄太が後ろを振り向いた。

そして、暫く歩いた後、また後ろを振り向いた。

今までにない動きだ。

「警戒・・・だな。」

真紀さんのボイスレコーダーがバレた事で、もしかしたら浮気がバレているかもと思ったのだろう。

雄太のようなしつこいタイプは、一度警戒されると、いつまでも警戒を継続し、調査がやりにくくなる場合がある。

今後は後ろからの撮影は危険だな・・・
見つかったら終わりだ。

だが、それでもまだ真紀さんをなめているはずだ。
自分が上だと思っているはずだ。

ここまで証拠を押さえられているとは、思ってもいないだろう。
真紀さんが通帳の金を引き出すとまでは、考えていないだろう。

浮気に限ったことではないが、こういった戦いは、相手に悟られず、どちらが先手を取れるか、どちらが先に有利な状態に持ち込めるかが勝負だ。

僕は尾行を中止し、駅に先回りして、正面から二人が駅の構内に入るのを撮影する。

雄太は、駅に到着するまで、何度も後ろを振り返っていた。
ひとみは、振り返る雄太の肩を叩き、笑いながら何か話しかけていた。

尾行なんかされている訳が無いとでも、雄太に話しているのだろう。
考えすぎだとでも、話しているのだろう。

警戒されたとしても一般人は、二、三回振り返れば、安心してそれ以上は警戒しない場合が多い。
しかし、雄太は定期的に確認している。

やはり警戒心は高そうだ。

僕は細心の注意を払いながら尾行を継続した。
二人は、会社近くで離れたが、どこによる事もなく、それぞれ会社に入っていった。

「・・・・・ふう。」
「とりあえず、一区切りだ。」

緊張が解けた瞬間、足がふらついてしまった。
座り込みたい衝動にかられる。

何も食べていないし、寝てもいない。
体力的には限界だ。

だが、まだ休むわけにはいかない。
真紀さんが金を引き出せたかの確認をしないといけない。
それに他にもまだしてほしい事が多数ある。

しかし、会社をこのまま監視をする必要はないだろう。
僕は会社の監視を解除し、ひとみのマンション近くに駐車している車まで戻った。

眠気と戦いながら、車内で今回撮影した映像のデータをパソコン本体と、外付けハードディスクにコピーする。

同じ映像を取る事は二度と出来ない。
依頼者の人生に関わる映像だ。

カメラは、内臓メモリーとSDカードで同時に撮影記録しているので、同じデータが4か所で保存される事になるが、万が一の事を考えると、複数のデータ保存は必然だ。

小型カメラでは、内臓メモリーとSDカード同時に撮影記録が出来ない機種もあるが、その場合はSDカードで撮影をしている。

カメラ本体の内臓メモリーだけで映像を記録していた探偵が、カメラを破損し、3件分の調査のデータを消失してしまった事があったが、カメラが破損しても、SDカードで録画をしておけば、そういったトラブルでもデータは残せる。

コピーが終わり、カメラの動作確認と、メンテナンスをしていると、知らない携帯番号から着信が来た。

無言で電話にでる。

「トランさん。真紀です。通帳のお金は全て下ろせました。」

真紀さんだ。

これで共有財産の管理は、こちらの手に入った。

雄太はまだ金を隠しているはずだが、金の確保が出来る出来ないでは、今後の立場がかなり違ってくる。

民事事件は、綺麗ごとを言ったって、最終的にはどれだけ金を搾り取れるかだ。
その金を、こちらが管理出来るのは大きい。

また、共有財産の半金は真紀さんの金だ。
真紀さんが戦える、また生活できる資金源が確保できた。

別居後、夫が有利に離婚する為の作戦の一つとして、兵糧攻めがある。

妻に金を渡さない作戦だ。

生活費を渡さず、また渡したとしても、生活できないぐらい少ない金額しか渡さず、月々の生活を苦しくさせ、通信費や、光熱費、保険などの毎月決まった支払いや、学費さえも払えなくさせ、妻を降伏させる作戦だ。

夫は、妻や子供が苦しくなった頃を見計らい、すぐに離婚に応じれば学費を払ってやる。すぐに離婚に応じれば、解決金を出してやる。養育費を出してやる。と言って、上から目線で通常より低い条件での解決案を提示する事がある。

妻は離婚したくなくても、条件を上げたくても、明日生きる金が無い為、子供の為に苦渋の決断で離婚に応じるしかない状況に追い込まれる事がある。

妻も、婚姻費用分担請求の調停を裁判所に申し込み、適正な生活費を請求する事は出来る。

しかし、妻が婚姻費用分担の調停を申し込んでも、審判までには3ヶ月から4ヵ月ぐらいかかってしまう事がザラだ。

その間、夫は生活費を渡さなくても罪になる事はない。お咎めもほとんどない。
審判で決まれば、過去に渡さなかった差額の婚姻費用を渡せばそれですむからだ。

しかし、その3〜4ヵ月の期間を利用して、兵糧攻めをしてくる夫がいる。
相手に弁護士が付いているほど、兵糧攻めをしてくる確率は高い。

もし、離婚を決意し行動を起こすなら、学費も含め、4ヵ月は生きていける金を確保する事を提案する。

ただし、婚姻費用の金額は妻が想定していた金額よりも、実際はかなり少なく感じる事が多い。
必ず、婚姻費用算定表で、自分の場合はどれぐらいの婚姻費用なのかの確認する事をお勧めする。

「真紀さん。お疲れ様でした。」
「ご主人は、やはり女のマンションに泊まっていました。」
「女と一緒に会社に出勤しています。」

「そうですか。そうでしょうね。」
「その事を聞いて、さらに踏ん切りがつきました。」

真紀さんは、淡々と答えた。

僕は真紀さんに次の指示をする事にした。

「疲れているとは思いますが、まだ動いてほしい事が何点かありますが、出来ますか?」

「トランさんは寝てないんですから、私も頑張ります。何でも言って下さい。」

「今引き出した金を、新しく通帳を作って預けて下さい。」
「出来れば、ご主人が思いつかないような地方の銀行や、信用金庫などがいいです。」
「しかし、その引き出した金は、調停や裁判になった時に、通帳開示する事になるかもしれません。」
「なので、その金の使い方は、後でご主人や、裁判官も確認されると考えて気を付けて使って下さい。」

「分かりました。」

「それが終わってから、電話ではなく、翔太くんの学校に行き、暴力を振るわれて別居した事、翔太君も暴力を振るわれた事を伝え、ご主人がもし来たとしても引き渡さないように伝えて下さい。」
「言い方は失礼ですが、貴女の怪我をした顔を見れば、すぐに対応してくれます。」
「また、それをする事により、ご主人に暴力を振るわれた事を第三者に伝えた実績が残ります。」

「はい。学校に行きます。」

「それと、壊れた携帯電話の名義はご主人ですか?貴方名義ですか?支払いはどうなっていますか?」

「携帯電話は私名義です。」
「支払いは別々です。」

「今、話している電話は誰のですか?」

「母のです。トランさんと連絡で必要なので借りました。」

「分かりました。」
「なら、壊れたスマホを持って、携帯ショップに行って下さい。」
「ご主人に壊されたという事も伝えて下さい。」
「あれだけの破損なら、修理は無理なので、新しい携帯の購入を勧められるので、購入して下さい。」
「今回引き出した金から支払っても構いません。」
「携帯電話は、今後ご主人との交渉で必要になります。」
「それと、翔太くんの連れ去りは無いと思いますが、心配なので携帯を与えてほしいです。」
「何かあれば、GPSで検索出来るので。」

「分かりました。」
「すべて終わったら連絡します。」

「お願いします。」
「他にも、役場にも言ってほしいですし、まだやる事があります。」
「時間との勝負なので、何とか今日中に終わらせましょう。」
「僕は申し訳ないですが、貴女から連絡が来るまで、仮眠をさせて頂きます。」

「も、もちろん寝て下さい。」
「トランさんに頼り切って本当に申し訳ないと思っています。」
「少しでも休んで下さい。」
「本当にすみません。」

「大丈夫ですよ。仕事なんで。」
「僕の事は気にせず、終わったら必ず連絡下さい。」

「分かりました。」

電話を切り、近くのコンビニで食事を買い、食べ終えた僕は仮眠に入った。
かなり疲れていたのだろう。

僕はすぐに・・・

眠りについた。

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